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--年--日 スポンサー広告 こめんと- とらっくばっく-

『浮雲』20120918

 ゆき子は、ふつと、池袋のホテイ・ホテルの事を思ひ出して、このまゝ伊庭と鷺の宮へ戻つて、あの狭い部屋で、二人で寄り添つて寝るのは厭だと思つた。自分が求めてゐるものは何も与えられないで、求めてゐないものは、運命的に、自分の周囲にまつはりつかれる気がして、心のなかでからからに乾いてゆく感じだつた。
「今夜、家で泊るの?」
「うん」
「部屋がないでせう?」
「お前は、どの部屋で寝てるンだ?」
「茶の間。荷物がいつぱいね」
「一緒に寝ればいゝよ」
「食べるものなくてよ」
「米は三升ばかり持つて来てゐる。なあに自分の家だもの、自由に台所を使つて、煮焚きすればいゝさ。何も遠慮する事はない。蒲団もいゝ方の奴が一組送つてある。帰つて荷ほどきをするよ」
「ぢやア、私は、池袋に泊るところがあるから、そこへ行くわ」
「馬鹿に警戒するンだね」
「さうぢやないけど、私、今夜は、仕事の事で、どうしてもお友達と打ち合せしなくちやならないもの、また、明日、わざわざ出掛けるの億くうだから‥‥」
「今夜は、久しぶりに逢つたンだよ。まだ、色々話もある。一緒に帰ンなさい。お前が、着物をどれだけ売つてるのか知らンが、叱りはしないよ」
「えゝ、その事は、どんなに叱られてもかまはないのよ。‥‥仕事の話で、友達の処へ行きたいンだわ」
 伊庭と添寝する事は、思つてもぞつとした。
2012年18日 林芙美子『浮雲』 こめんと0 とらっくばっく-
  

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